午後から雨だという。朝のうちに散歩にでかけた。大水の谷戸のどん詰まりまで行くと小さな階段がある。ほとんどの谷戸には、地図には出ていない近くに住んでいる人だけが使っている小さな道がある。そこを登ると東朝比奈に通じている。真っ直ぐ行くと千光寺に行ける。池のカエルの卵はどうなったか見に行った。数週間前に真っ黒におたまじゃくしがかえっていたが、それがずいぶん大きく育っていた。でも数えられるくらいの数になってしまっていた。自然は厳しい。いつものように猫塚にお参りした。猫塚とは、昔、六浦湊に着いた唐船に乗っていた猫を弔った塚である。八百年も前の話である。
門を出て坂を降ると右手にキレイに整備された公園がある。そこに、幼稚園の幼児を乗せるような手押し車が置いてあった。なんでここにあるのだろうと訝しく思っていると、少し先の草むらに立派な秋田犬が男性に手綱を持たれて座っていた。傍らに奥さんらしき人が立っていた。立派な秋田犬である。見ていると、その大きな犬を、二人で手押し車に乗せ始めた。近づいて、良い秋田犬ですね。と言うと、「この犬は骨肉腫で歩けないんです」と返ってきた。見ると左前足が無かった。右の後ろ足も義足のようなものをはめていた。「もう13年も育てている老犬なんです」人間だったら九十歳近い年齢である。「こんなに大事に育てれれている犬は幸せですね」と言うと「そう言っていただけると嬉しいです」
このご夫婦は、これからも、この秋田犬の面倒をずっと見ていくのだろう。犬との散歩は生活の一部で家族の一員になっているのだろう。犬畜生という言葉があるが、ここでは全くそぐわない。文明が進んで、いつの日か人間が犬の言葉を理解する日が来たら、この秋田犬はご夫婦に「ありがとう」と言うに違いない。
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